前回の配信では、来年度の小規模事業者政策の転換、特に成長志向の事業者支援(「成長志向の経営計画書」(1億宣言))について書きました。この支援策の詳細については未だ公表されておらず時期尚早かとも思いますが、本日はさらに突っ込んで私見を述べたいと思います。

1)「成長志向の経営計画(1億宣言)」の意義 ⇒ 「補助金獲得のための経営計画」から「本来あるべき経営計画」へ
*経験上、自発的に短期・中期の経営計画書を策定している小規模事業者は稀ですが、補助金獲得のために事業計画書を書いてきた小規模事業者はたくさんいます。その場合、計画書を策定しても補助金採択後に見直し・フォローアップする事業者はほとんどいないのが現実かと思います。あくまでも「現状維持」を方針とする事業者であれば、それで良いでしょうが、将来事業を大きくしたいと考える成長志向の事業者にとってはもったいない話です。「成長」するためには具体的な道筋(計画)が必要であり、「ゆきあたりばったり」の経営では限界があるからです。
本来の意味での経営計画書とは、補助金獲得とは関係なく、将来の目標を達成する為に道筋を明確にし、社内で共有することかと考えます。その際、具体的に目標を設定、内部・外部の環境分析を行い課題を明確にし、その解決策(施策等)を設定する、そして毎年レビュー・見直しが必須です。補助金獲得とは単なる資金調達の1施策とも考えられます。こう考えると「成長志向の経営計画」とは、本来の意味での経営計画を小規模事業者に策定いただき、商工会・商工会議所が伴走支援していくという仕組みと言えます。今回の「成長志向の経営計画」は、そのための初めての試みと考えます。
2)「成長志向の経営計画」を策定するメリット
①「本来の意味での経営計画の運用」「経営管理能力の向上」
補助金申請での経営計画書・事業計画書は形骸化していることは前述しましたが、本来の意味での中期経営計画を自力で作ったことのある小規模事業者は稀でしょう。今回の「成長志向の経営計画」は、それに取り組む絶好の機会です。計画を作成することで、事実・数字に基づいて経営者の頭の中を整理でき、売上一億という目標達成のための明確な道筋を紙に描くことができます。また、計画を作成する中で新しい気づき・発想に繋がるかもしれません。計画の作成・フォローアップは支援機関が手伝ってくれます。成長志向の強い意欲のある小規模事業者であれば、これにチャレンジする価値は十分あるでしょう。
また、本来の意味での中期経営計画は、定期的にレビュー・見直ししなければ意味がありません。計画のPDCAを何回も回していくことで、経営者の経営管理能力は向上していくことになるかと思います。
②資金調達におけるメリット(補助金活用、融資が受けやすい)
事業を成長させるためには、そのための投資が必須であり、結果として資金需要が増えてくるのが普通です。計画には当然資金調達の計画も触れる必要がありますが、当計画の作成・宣言することが以下のメリットが生まれます。
ア)持続化補助金での優遇措置(成長志向枠の新設、優遇内容は未定)、及び他補助金での優遇措置(検討中)
イ)マル経融資の優先適用(迅速な推薦など)
ウ)「成長志向の経営計画」を作成・宣言していれば、金融機関からの信用が増し、融資を受けやすくなるのではないかと期待できる(私見)
③商工会・商工会議所等の支援機関との関係強化
政府は、成長志向の経営計画について商工会・商工会議所の経営指導員による伴走支援を必須とする方向を示しています。当計画について協議していく中で、商工会・商工会議所よりアドバイス受けられるでしょう。また、他の支援機関・金融機関へ相談する際、こういう経営計画書があれば大変役立ちます。特に、上のウ)にあるとおり金融機関との関係強化にも繋がるかと思います。
3)「成長志向の経営計画」を策定する負荷、及び事業者タイプ別の相性
当計画を作成・宣言した上で運用していくためには以下のような高い負荷・要件があります。
①経営計画作成に相当の時間・労力が必要
②売上・利益・原価・資金繰りなどの数字を把握する必要があり、そのための能力・仕組みが必須
③目標と実績の差異を定期的に確認する必要があり、経営指導員との継続的な伴走支援・モニタリングも必要
これらを考えると、当計画を作成・宣言を検討すべき小規模事業者のタイプは以下のとおり;
①中長期での売上拡大(または高収益化)を目指しており、その意欲も高い
②計画に必要な様々な数字を管理しており、計画の進捗をモニタリングするために必要な経営リテラシーを持っている。
逆に言えば、「経営方針が現状維持」「数字をほとんど管理していない」等の事業者は、当計画の活用には適さないでしょう。また、当計画の性格上、「補助金の優遇措置だけが目的」での活用も避けるべきかと考えます。
以上、当計画の詳細は来年3月頃までには明示されると予想します。制度内容をしっかり確認し、当計画の策定・宣言を検討の上、商工会・商工会議所へ相談する必要があるでしょう。